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ろいこの備忘録

柳川絞り

紅白に咲き分ける「源平咲き」の梅のひとつです。
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赤…平氏の旗の色
白…源氏の旗の色

源平合戦にひっかけるとは、粋なネーミングですよね。


花の色が紅白に分かれるのはなぜでしょうか。



1本の樹なのに、ちがう色の花が咲く…
さらには、たったひとつの受精細胞から成長した、枝や葉っぱ、幹、根っこ…
どの部分の細胞も同じゲノムDNAを持っているのに、それぞれ違います。

これは、不必要な遺伝子をoffにしたりして機能を調節する仕組み「エピジェネティクス」によるものです。
(エピジェネティクスとは…DNAの配列に変化を起こさず、かつ細胞分裂を経て伝達される遺伝子機能の変化やその仕組み、またはそれらを探究する学問。と定義されています。)

花の色を変化させる要因となるのは、エピジェネティクスのひとつである、「トランスポゾンを抑制する」という働きです。
「トランスポゾン」とは勝手に動き回る性質のある、困りもののDNA領域で、生物の進化の途中でゲノムDNAに寄生するようになったDNAと言われています。トランスポゾンもゲノムDNAの一部なので、もちろん子や孫に遺伝します。
しかしトランスポゾンが勝手に移動してゲノムDNAの配列が変わってしまうと、生物にとって有害な突然変異が蓄積してしまいます。
そこで、生物の細胞はトランスポゾンを抑え込む(遺伝子を働かなくさせる=offにする)仕組みを持っているのです。

おそらくこのウメの場合は、花の色を決める遺伝子の近くにトランスポゾンがあって、トランスポゾンを抑え込む作用が、隣にある花色の遺伝子にまで影響してしまう(正常な色素を作れなくなる=白くなる)場合と、そうでない場合があるのだと思います。
花形成のごく初期に一度抑え込めば、細胞分裂しても維持されるので、その後の細胞系譜では花全体の色が変わったり、花びらごとに紅白になったり、絞り模様になったりするわけです。

もしくは、抑制が上手くいかずトランスポゾンが脱離してしまうこともあります。
花の色を決める遺伝子の途中にトランスポゾンが入り込んでしまっていて、正常な色素が作れなくなっている場合、トランスポゾンが脱離することで遺伝子の配列が元に戻り、その部分だけ花色が回復するのです。(復帰突然変異
この場合はゲノムDNAの配列が変化しているので、エピジェネティックな現象ではなく、キメラということになりますね。


ちなみに、三毛猫の模様もエピジェネティックに決まる(この場合は、片方のX染色体がランダムにまるごと不活性化される)ものなので、クローン個体でも全く同じ模様にはならないそうです。



参考文献:岩波科学ライブラリー101「エピジェネティクス入門」著者/佐々木裕之
by leuko | 2010-03-13 11:09 | 植物